米利上げ休止は短期ドル安も資金フロー面ではドル高を促す!?

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昨日のUSDJPYは、主要チャートポイントとして注目された115.83円処が破られ、モデル系ファンドなどの売りシグナルを点灯し、一時115.30円まで下落した。 しかし、Fibonacci retraceの115.14円処(=61.8% of 113.45⇒117.88)を試すには至らず、このあと115円Highへ急速に買い戻されている。

 この日発表された米経済指標は、新規失業保険申請者件数が雇用拡大の目安とされる30万件を下回る29.8万件に改善、6月の耐久財受注も前月比+3.1%と事前予想を上回ったが、6月の新築住宅販売が前月比▲3.0%と今年2月以来の減少に転じ、強弱両サイドの内容となっている。
 一部メディアは、「米国経済が急速に減速する可能性があり、利上げ停止につながるとの見方からドルは主要通貨に対してほぼ全面安になった」と報じているが、残念ながら現段階で米景気が失速すると判断できる材料は揃っていない。

 ちょうど2週間前に日銀はゼロ金利政策の解除に踏み切っているが、2000年8月のゼロ金利解除の失敗もあり、最大のリスク要因として掲げる米経済の動向についてはより慎重な分析がなされてきたが、日銀は「米経済の減速は安定成長への軟着陸につながる」との判断に至っており、むしろ歓迎しているのである。

 ここでのポイントは、米景気が減速する局面ではドル安が進展するとのシナリオを描きやすいが、実際には「米景気循環とドル相場の関係」のフローチャートが示すように、2つの経路からドル高が促されることが多い。

 また、「米景気循環をベースにした金利とドルの関係」においても、図が示すように資金フローに伴うドルの持続的な方向性は、利下げ局面(第Ⅱ象限)こそがドル高となっているのである。
 図に示した「第Ⅱ象限」とは、米景気と金利がピークから下がっていく局面を示すが、米国経済は相対的な堅調さを保っている。 債券利回りは最もハイ・イールドの状態にあるうえ、金利循環からの低下観測からキャピタル・ゲインも狙える局面となる。 つまり、ドル債投資には絶好の買い場面となるため、米国への資本流入はかえって勢い付き、ドルは一段高になるという局面である。

 そして、米国経済が次第に減速し、潜在成長ペースを下回るような状況に至ると、(FEDの利下げで)相対的に低い金利水準も魅力を失う。 債券価格は値上がり途上にあるが、ディーリング的な回転売買が中心となってくる。こうして、金利低下とドル安という「第Ⅲ象限」の局面に入っていくのである。
 現段階は、「第Ⅰ象限」から「第Ⅱ象限」へ向かおうかという局面に位置するものと観測されるが、FOMCメンバーが迷っているように確固たる判断材料は揃っていない。

 8月8日のFOMC開催までは重要指標の発表が目白押しとなっており、米景気減速とインフレの進行度合いをギリギリまで見極める必要があり、当面は短期筋のポジション調整を主体とする神経質な値動きが想定されてこよう。

 外為市場で投機的な売買動向を見る際の指標となるIMMファンド筋の円の持ち高(07/18時点)は、日銀のゼロ金利解除後に膨大なショートポジションが構築され、今年02/21以来の売り越しとなっていたが、取引中心9月限の取組高が07/21を境にして減少傾向にあることから、ショート・カバーが進展しているものと推測することができる。
 しかし、この取組高が円高進展と共に増加に転じる場合は、円ロングを構築するために新たな資金が流入している可能性を示すため、一段の円高進展に対する警戒は怠らないようにしたい。

 本日の注目材料は米4-6月期GDPであり、ベージュブック(米地区連銀経済報告)が示した景気減速の進行度合いを見極めることになり、同時にFRBが重視する個人消費支出(PCE)ベースの物価指数により景気減速下のインフレ率にも注目することになる。

 バーナンキFRB議長の議会証言やベージュブック(米地区連銀経済報告)を受けてドルが売られやすい地合いにあるものの、来週には米国経済の重要先行指標であるISM製造業景気指数や伝統的に重視される雇用統計、そしてFOMCメンバーによる講演を控えており、一方的なドル売りには自ずと歯止めが掛かってこよう。
 トレーダーは過去の統計であるGDPよりも先行指標であるISM指数をより重視する傾向がある。何故なら、FEDが利上げを休止し、利下げを検討した局面は、ISM指数が50 を割り込んだタイミングと一致しているからである。

(7月28日 11:05記)

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この記事へのコメント

m.m
2006年07月29日 01:13
森さんこんばんは

ポンドルは5/17を高値としたフィボナッチ・リトレースメントでほぼ61.8%戻したところで反転していますね。
ドル円は6/27を高値にしたN計=114.60処を攻防中。この先は雲の上限もあり、これ以上のドル安には自ずと歯止めがかかってきそうですね。

今週もいろいろイベントや指標がありましたが、やはり先行きに不安材料を残した中、テクニカル色の強い一週間となりましたね。

ドル円はこのままE計算=110.20、V計算=109.00処を攻めていくのか、それとも7/10と本日を安値にNT計算=115.70処を目指して反発するのか、ISM製造業景況指数が大きな鍵を握ってきそうですね。

明日も仕事が早いので、とりあえず週末にもう少しテクニカル面を再検証してみたいと思います。

来週の「森レポート」を今から待ち遠しく思っております。

夜分遅く失礼いたしました。
mori
2006年07月29日 11:04
m.mさん、おはようございます。

只今、8月第1週の『森レポート』作成のため各種データ分析を行っている最中です。
FFレート先物は、8月の利上げ確率が32%まで急低下しています。8月相場のアノマリーも手伝ってドル先安感が勢い付きそうですね。

来週はドル下落の深度が焦点となってきますが、今回のUSDJPYはクロス円の下落余地がカギを握りそうですね。

では、作業に復帰します。
m.m
2006年07月29日 20:51
森さんいつもお疲れ様です。

大切な作業のお時間を割いていただき本当にありがとうございます。

ご指摘いただいたとおり、重要イベント目白押しの来週はドルの底辺を見極めるのに重要な一週間となりそうですね。
クロス円は軒並み反転のチャートポイントを目前に控え、そこをことごとく破ってくるか、もしくは防衛しきるかによってクロス円(特にドル円)の今後が大きく変わってきそうです。

今週の急落を受けて、FEDメンバーがどのような手を打ってくるのか、素早い判断が求められる情勢ですね。

原油もGDPを受けてひとまず反落しましたが、日生さんもご指摘の通り、今年もハリケーン多発が見込まれており、1バレル80ドル台は大幅な利上げを決断せざるを得ない、米経済の崩壊を意味する旨をバーナンキ議長もコメントしており、FRBにとって厳しい夏が続きそうですね。

季節柄、くれぐれも体調変化にはお気を付けくださいますようお願い申し上げます。
mori
2006年07月29日 23:56
m.mさん、ありがとうございます。

本当に来週は重要な1週間となりそうですね。
少々意外だったのは、USDJPYが07/19の117.88円が戻り高値となってにもかかわらず、IMMファンド筋の円ショート(07/25時点)が過去最大となっていたことです。
28日の下落局面でどの程度のショート・カバーが進展したのか、その進行度合いで相場展開が大きく変わってきてそうです。

それから、28日のEURUSDが27日の高値を超えられなかったのが、意外でしたね。

来週は重要イベントが目白押しですから、大方のドル安予想を覆すような相場展開となる可能性もありますね。
m.m
2006年07月30日 01:46
お返事本当にありがとうございます。

なんだか書き込むたびに森さんのおじゃまをしているのでは、と少々心苦しくもあるのですが…。

IMMファンド筋の情報、意外の一言ですね。森さんのIMMファンド筋の解説は相場を立体的にイメージする上で大いに役立たせていただいております。ありがとうございます。

ユロドルの動きには私も同様に違和感を感じておりました。
7/26時点でGDPの結果待ちながらチャートポイントでも1.28は間違いなく超えてくるだろうと見ていたのですがフィボナッチ50%戻しであっさり跳ね返されてしまいました。
どうも先週から感じていたのですが、8月利上げを100%織り込みながら予想外に上値の重い展開が続きすぎている嫌いがあり、ユーロ高を牽引していた感もあるユロ円の失速を見ると、半年以上続いてきたユーロ高もひとまず一服→本格的な調整へ、という流れもあるのでは、と考えつつあります。

ユーロ、ドル、共に来週が今後の流れを読む重要な週になってきそうですね。

来週もまたよろしくお願いいたします。

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