「短期金利格差」着目型の資金シフト継続!?

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 日経金融新聞による『今週の「円」ブルベア調査』が、再び円高予想に傾斜していたが、週明けのドル/円はむしろ底堅く推移した。(⇒このブルベア調査に参加にしている国外銀行4行の内2行は円安予想だったが、国内銀行は7行の全てが円高を予想していた。)

 ドル安・円高予想の最大の根拠となっているのは、バーナンキFRB議長の議会証言を受けた米利上げ休止観測であるが、現在のマーケットを取り巻く環境は地政学的な不確実性要因も加わってリスク忌避的な投資行動が正当化される状況にあり、「米利上げ休止=ドル売り」のロジックは持続しづらくなっているといえよう。

 また、米金融当局は、足元の米国内景気の減速を認める一方で、今後1年半は潜在成長率に近いペースで拡大するとの楽観的な見方を示しており、現段階から積極的にドル売りを仕掛けるということではなく、今週発表されるマクロ指標によりインフレと景気減速の進行度合いを見極めるというスタンスとなってこよう。

 今週発表される一連の米経済指標はいずれも弱い内容と予想されており、ドルロングに傾斜する短期筋の持ち高調整を促す可能性が指摘されるが、米景気減速は日銀の「追加利上げ先送り」を促す要因となり、一方的なドル下落には自ずと歯止めが掛かってこよう。

 外為市場で投機的な売買動向を見る際の指標となるIMMファンド筋の円の持ち高は、07/18時点でショートポジションを前週から3倍以上に拡大していたことが明らかになっている。 この間には、日銀がゼロ金利政策を解除しているが、当面は低金利(=実質金利はマイナス)が続くとの見方がコンセンサスとなっており、ゼロ金利解除を境にして円キャリー・トレードの再開を髣髴とさせる動きが生じている。
(⇒地政学的な緊張が高まる状況下、ドルはキャッシュポジションで5%超の金利収益が得られるため、グローバル・マネーの受け皿にもなってくる)

 加えて、通貨オプション市場ではドルの不確実性が高まると上昇する傾向にあるインプライド・ボラティリティー(予想変動率)が、低位安定していることも見過ごすことができない。
(⇒当然のことながら、予想変動率が低ければ、金利差着目型の取引が見直されることになる。)

 ワシントンG7(04/21)後には、グローバル・インバランスをテーマに広範なドル売りが進展したが、当時のインプライド・ボラティリティーは04/13の8%割れの水準から05/12には11.40%まで上昇していたが、足元では8.25%と低位安定しており、ドルの不確実性が現在のマーケットの主要テーマになっていないことを示している。 
(米政府は4月にドル安政策で失敗しているため、この問題は先送りされる可能性が高い)

 中期的な観点からも、世界経済のエンジンを担ってきた米経済が鈍化すれば、世界的なカネ余りと好景気を背景に新興国市場に流入した資金引き揚げが促され、低リスクかつ高金利のドルへ流れる可能性が出てこよう。

 先週末のコメントでは「ドル/円の季節性」を採り上げ、7月末から8月上旬にドル高・円安のピークを付ける可能性が高いことをデータと共に紹介したが、最も重要なことはドルがピークアウトした後の相場展開となってくる。 
 過去データに基づく変動パターンは、「続落型」と「反発型」の二つに大別され、前者の場合は9月の国際会議などを経てドル安・円高が加速するパターンであるのに対し、後者の場合は複合的な要因ながらV字型でドル高・円安が進展するパターンとなっている。

 2006年は例年と比較してドル下落を正当化する要因があまりに多く揃っており、4月初めからドル下落にバイアスを掛けた見通しを持っていたが、現状では最新の分析によりドル安定シナリオに傾斜しており、年後半は8月の季節的なドル下落を経て「ドル反発型」のパターンを辿るという相場展開を描いていきたい。

(7月25日 11:20記)

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この記事へのコメント

DDT
2006年07月25日 14:26
今日は、森先生。
ついに、ドルブル転換ですね。
私も、22日のIMMの円ショートポジの積み上げと、ここのところの底堅さでドルベアは弱いと見ていました。
しかし、昨年のようなドルブルのチャートとは素直には行かないようにも思えます。

地政学的リスクについてですが、イスラエルに関しては、早期には落ち着いてくると見ています、とは言っても数週は掛かるでことですが、
当面のイスラエルの目的が達成できそうですし
ライス国務長官の働きはグットタイミングでしたし。
今回の中東の騒動で中期的に見て一番得をしたのはイスラエルだったと見ています。
当然、一番貧乏くじを引かされたのはヒズボラです、その次はイランとシリアですね、特にイランは思惑が外れた形になります。

北東アジアの地政学的リスクは事実上沈静化したと見てよいでしょうね。
また、暫く北朝鮮は延命のために策を模索することでしょう。
北東アジアでは一番得を得たのは日本、一番の貧乏くじは中国となりました。


DDT
2006年07月25日 14:29
秋口ぐらいにはイスラエル地政学リスクも゛ホット゛な時期を離脱すると見ていますが、(イラン核問題は今年来年で決着が付くとはブッシュ政権も考えていないでしょう、イランは次政権への宿題になる可能性が高いでしょうね)その後の資金の動きはどうなるか?
その時の森先生の分析を楽しみにしています。
mori
2006年07月25日 14:46
DDTさん、こんにちわ

ドルブルというよりはドル安定に近いと認識しています。
今年の相場の特徴は不確実性要因が山積していることですが、これが却ってドル安定を促す要因になってくると捉えています。

 現在、8月7日のセミナー準備しているところですが、詳細に分析を進めれるに従い、ドル下落よりも安定の可能性のほうが高いと判断せざるを得ない状況にあるという結論に達しています。

 勿論、マーケットは様々な要因を織り込んで変化し続けているため、一つの相場観に固執するつもりありませんが、現状ではドル安定をメインシナリオとして描いています。

 目先は8月の季節性でドルの下落の深度が焦点となってきますが、国内機関投資家は中長期スタンス(⇒米利下げでキャピタルゲインとインカムゲイン)での米国債投資を考えているようですので、ドルの一方的な下落には歯止めが掛かると思われます。

mori
2006年07月25日 14:46
また、安部新政権の下では、基礎的財政収支均衡という目標に向けて、増税軽減と名目3%成長を達成するため政府・日銀が政策協調する必要があり、ポリシー・ミックスの観点からは持続的な円高は想定しづらいと考えています。

初心者KT
2006年07月25日 17:35
こんにちは、森先生。
前回のセミナー内容と今回(8/7予定)では方向性が異なるという事ですか!?また先生の仰る「ドル安定」とは持続的なドル高を意味しているのですか!?それとも或る幅でのレンジ相場的方向でドルが安定するという事ですか?
mori
2006年07月25日 18:05
こんにちわ

私の相場観はあてになりませんので、一つの考えとして流して下さい。

5月のセミナーで紹介した相場材料は、今でも有効だと信じています。
ただ、今年はあまりにドル安材料が揃いすぎているため、米当局も慎重かつ警戒姿勢であり、リスクマネーも様々な不確実性要因に直面してドル売りを仕掛ける余裕がなくなっていると思われます。

足元で米景気減速や利上げ休止観測などドル安材料があっても持続的なドル売りは出ていません。
先ほども、中国国家統計局が「ドル安進行のリスクがあるため外貨準備分散を加速すべき」との報告書でドル売り・ユーロ買いがみられましたが、極めて一時的な動きにとどまっています。

以前であれば、ドルが急落していても不思議ではありませんよね。

初心者KT
2006年07月25日 21:25
「ドル反発型」シナリオが現実味の可能性と浮上するならば、この要因中に「短期金利格差」という要因が入るのであれば正直驚いてしまったのは事実です。またそのテーマに着目させざる終えない米のリスクマネーの多さにも今日は驚かされました。8月のセミナー楽しみにしています。投資は自己責任ですので、もろん自分判断し責任を取りますのでご安心を。
mori
2006年07月25日 21:34
最新のファンドマネジャー調査によれば、世界の機関投資家のキャッシュ比率は米同時テロ以来の最高に達しています。
それだけ、リスク回避志向を強めているということです。

「短期金利格差」が重視されるときは、どのような市場環境であるかを考えて頂きたいと思います。それほど驚くことでもないと思います。

以下は19日のコメントの一部です。

・ インターバンク等の短期資金の米国への流入を促す
・ 米企業の資金調達コスト悪化により海外利益のリパトリ(=本国回帰)を促す
・ 多国籍企業が保有するキャッシュポジションの現地通貨からドルへのシフトを促す
・ 米投資家の対外投資における為替ヘッジ比率(=ドル買い)を高める
・ 海外投資家のドル債投資の為替ヘッジ比率(=ドル売り)の低下を促す
・ ヘッジファンドや投機筋のベース・ポジションのドルロング傾斜を促す

い~む
2006年07月25日 21:53
森先生こんばんは
突然ですが次回セミナーも後日公開予定があるのでしょうか?
セミナー当日は仕事の関係で参加できないので。。。
多少遅れても是非参考にさせていただきたいのですが。。。
mori
2006年07月25日 22:02
こんばんわ

トレイダーズ証券で8月7日に開催予定です。
公開になると思いますが、3月の時は技術的な問題で公開できなかったようですので、お約束はできないです。

詳細はこちらからどうぞ。
http://www.traderssec.com/
い~む
2006年07月25日 22:34
ありがとうございます
是非公開していただけるようトレイダーズさんにお願いしておきます(笑)
EURO SELLER
2006年07月26日 00:04
こんばんわ、

昨年12月はじめにドル円を120円台で買った私の友人が、やっと損益分岐点に達して、110円でも130円でもドンと来いやとにわか強気になっております。恐るべし短期金利相場です。一旦手仕舞って、新たな押し目を狙ったほうが、リスクが少ないんじゃない?とアドバイスしておきましたが、109円を経験したことで、15円下がっても耐える決心がついたそうですので、彼は本当に利率の良い外貨預金を数年のスパンでやっているようです。世の中いろいろな人がいますね。(笑)
DDT
2006年07月26日 02:43
森先生、遅くなりましたが丁寧な御返答ありがとうございます。
FerFabLiepe
2011年01月26日 17:54
@dallasemmitwayne Yep that s? me:)
dallasemmitwayne

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