日銀のゼロ金利解除はどこまで織り込み済みなのか!?

画像

日銀は本日2日目の金融政策決定会合で約5年4ヶ月続いた「ゼロ金利政策」を解除する見通しとなっている。 市場ではゼロ金利解除はほぼ織り込み済みで、今後の利上げについても慎重なペースで行われるとの見方が大勢であり、ゼロ金利解除の影響は限定的と受け止められている。

 国内の景気実態は4月の「日銀展望リポート」(経済・物価情勢の展望)のシナリオに沿って推移しているが、足元では中東情勢の緊迫化など地政学的な不確実性が高まり、再び世界同時株安という不穏なムードに覆われており、ゼロ金利解除が次回8月会合まで見送られるという“サプライズシナリオ”も排除できない情勢となっている。

 いずれにしても、「ゼロ金利解除」に関するコメントはすでにウンザリするほど出回っているため、少し切り口を変えて市場への影響を探ってみたい。
 まず、本日の金融政策決定会合では、今後の利上げペースを占う上で以下の点に注目したい。
①ゼロ金利解除が全会一致で決定されたか? 9人の総意であることが重要
②無担保コール翌日物金利の誘導目標は?  概ねゼロ% ⇒ 0.25%?
③公定歩合(短期金利の事実上の上限)は? 0.10% ⇒ 0.35%~0.50%?
④「なお書き」対応はあるか?    金融市場が不安定化した場合などの特例
⑤「展望リポート」の中間評価は?
    
 まず、②については、今朝のモーニングサテライトに電話出演していた外銀為替ストラテジストは、国内エコノミストは年内の追加利上げを誰も想定してないと述べていたが、金融政策の見通しに敏感に反応するユーロ円3ヵ月金利先物市場は、ゼロ金利解除を確実視したうえで、10-12月に25bpの追加利上げを織り込んでいることを示している。
 為替市場に認識ギャップが存在するとは考えづらいが、タイムスケジュールからすれば日銀が追加利上げに踏み切る前にECBやFRBが追加利上げを実施する可能性が高く、市場への影響は限定的であるとすることができよう。

 ③については、短期金利の事実上の上限となってきた公定歩合(ロンバート金利=補完貸付金利)がどの程度まで引き上げられるのかが、日銀の慎重姿勢を占うポイントとなっている。 公定歩合は「政策金利+1%」がグローバル・スタンダードであり、今回の会合では0.50%がコンセンサスとなっているが、これが0.35%や0.40%にとどまる場合は、為替市場では円売り材料となる可能性が指摘されよう。
 ④については、例えば「金融市場が不安定化した場合には、コールレートが一時的に誘導目標を下回ることを許容する」というものであり、日銀ボードメンバーが足元の地政学的な不確実性をどう捉えているかを探る手掛かりとすることができよう。
 ⑤については、「展望リポート」では景気の動向にあわせて金利を上げていくことを前提にしているため、足元の国内景気指標で上振れが目立つなか、4月に提示したシナリオをどのように中間評価するか注目される。

 次に、2000年8月にゼロ金利政策が解除された当時の為替市場の反応を取り上げてみたい。幸い、当時の『森レポート』(⇒正確には当時は『Plays of This Week』というタイトルで発行)が手元に保管してあるため、簡単にゼロ金利が解除された2000年8月11日のUSDJPYの値動きを振り返ってみたい。

 2000/08/10(木) のUSDJPYは、108.03円で始まった後、日銀金融政策決定会合を目前に控えてゼロ金利解除を織り込む格好でドル売り・円買いの動きが活発化(107.45円)したが、マーケットはむしろ『日銀vs 政府』の喧騒を嫌気、一転してドル買い戻しが優勢な地合いとなると、途中Stop Lossを巻き込みながら、NYタイムでは一時109.00 近辺まで値を戻す場面も見られた。 08/11(金)は、朝方に108.54 円近辺の下値を見た後、仲値決済に向けたドル買いに一時108.83円まで戻したが、その後は開催中の日銀金融政策決定会合での結果を見極めたいとの姿勢が強く、108.70円を中心とする上下10銭の揉み合いに終始した。 週が変わって08/14(月)の欧米タイムでは日本の景気回復に懐疑的な見方が広がり、109.60円まで上昇、翌08/15(火)には一時109.64円まで上値を伸ばしたが、08/22のFOMCが事前予想通り『金利据え置き&インフレ警戒型の政策運営姿勢』との結果となると、市場の関心は『日本サイド』の要因に向けられる格好となり、下落基調のなか09/07には一時104.75円までドル安・円高が進展した。 

 2000年8月当時は、日銀と政府の対立が際立っていたことや、景気情勢が現状とは異なるため単純な比較はできないものの、米国の金融政策の行方がカギを握る状況に変わりはないといえ、今晩発表される米6月小売売上高、7月ミシガン大学消費者信頼度指数、そして来週のCPI・PPIが重要となってこよう。

 最後に三極経済圏が同時利上げした局面を採り上げておきたい。
1970年以降では、米独日が当時利上げする局面が4回あったが、いずれも日本が最後の利上げのとなるが、同時引き締めは世界経済に悪影響を与え短命に終わっている。
 特に過去4回の内3回は先行利上げした米国の金融緩和で幕引きとなっている点には留意したい。

(7月4日 10:48記)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

DDT
2006年07月14日 13:39
今日は、森先生。
なかなか出しませんね、日銀。

2000年の森レポートですか、当時も読ませていただいていました、私の為替歴は森先生のレポート無しでは有り得ないほど、森先生には
御世話になっています。
「円は格調高い通貨であれ」速水元総裁の口癖が表すように根っからの円高論者ですから、政府との軋轢は福井総裁どころではなかったですね。
当時は、地政学リスクはありませんでしたから、今回とは条件が違うのは理解していまして
解除後も慎重に仕掛けたいと思っています。

そろそろですね。
mori
2006年07月14日 13:59
DDTさん、こんにちわ

当時からお付き合い下さっていたんですか。
大変恐縮でございます。
当時は毎日レポートのなかで、日記形式で「公開ポジション」もやっていたんですね。先ほど読んでいて懐かしくなりました。

ところで、福井日銀総裁の場合は、発言にサイクルがあるという著名ストラテジストのレポートがありまして、それによると「ゼロ金利解除」を行った後に主要市場の落ち着きが確認されれば、「タカ派」発言を再開して次の一手を織り込ませるという読みです。

こうした観点からは、本日の記者会見は先を急ぐような発言は無いと考えた方がよさそうですね。 福井総裁は、9月の小泉首相退陣時に辞任するという噂がありますが、デフレスパイラルという環境下での「量的緩和政策」と「ゼロ金利政策」という異常な政策を自らの手で葬り去るわけですから、偉大なセントラルバンカーとして称えてあげたいですね。
DDT
2006年07月14日 19:57
今晩は、御返答ありがとうございます。

福井総裁の発言のサイクルの御教授、ありがとうございます。
マーケットの対話、速水総裁の時には、私が未熟のせいでしょうがあまり記憶にはありませんね。
殺されたことは一度ありましたが(笑
マーケットの対話が成り立つセントラルバンカーとしても称えたいと思います。

御指摘の通り福井総裁はまだ゛ハト゛でした。
何時゛タカ゛になるか注目しています。
辞任の件ですが、今日も否定の発言でした。
出来ればこのまま継続を私も望んでいます。

ドル円ですが、何とも高値付近で揉んでいます。
もし、ゼロ金利解除が悪材料で尽くし、若しくは織り込み済みと市場が理解しているなら、地政学リスク要因も手伝い、116円台をクリアしてきても良いはずです。
しかし、この状態。
潜在的な円高圧力に曝されていると見てよいのではないでしょうか?
北朝鮮リスクの沈静化と供に、円高株高の動きに移行してくるのでは?と現段階では見ています。
ただ、中東リスクに絡む原油高がどうなるか?
次から次へと色々な要因が出てきますね。
これだからマーケットは面白いです。
mori
2006年07月14日 20:10
DDTさん、こんばんわ

私も福井総裁が継続されることを心より望んでいます。「市場との対話」に長けたアジアのグリーンスパンと言われる人物ですからね。

ゼロ金利解除後の債券市場の反応は、全面高で新発10年債が6月20日以来の低い水準まで低下しています。
こうした状況からは、円安がもっと進展してもよさそうなものですが、ご指摘のように地政学的な不確実性がリスクマネーを萎縮させているかもしれません。

来週は、こうした地政学的要因に加えて、米国サイドの材料に注目することになるでしょうが、とりあえず今晩の米経済指標と株価に注目ですね。
fumikosagawa
2006年07月14日 21:25
moriさま今晩は
どうやら一幕終わったようですね、やはり日銀の材料はみかけだおしのようでしたね、これで安心して年末まで上下をくり返しながらも円安基調は定着していくのでしょうね、私は自分の都合のいいように事が運ばないかと思索しておりますが、結局分かりません^^。都合のいいこととは、ドル・円がこの前の高値121円38銭を年内に超える可能性がないかということです。そうなれば、カナダも当然新値をつけるでしょうから、原油も80ドル台がみえてきたようですし、カナダのサンドオイルが脚光を浴びる日が近いと思っています。地政学リスクもカナダは少ないし、期待しています。カナダは暴落段階で103円20銭あたりで多少踏みとどまりました。それと暴落のスタート103円60銭ごころが節かなとみています。そこを超えれば、再度の104円43銭挑戦かなとみています。その後は105円05銭の先の高値奪回でしょうか、年末からは、流れが変わる可能性もありますね。それまでには、何度かトレードしたいとおもいます。また詳細な分析楽しみにしています。
感謝のふみこでした^^
mori
2006年07月14日 21:40
こんばんわ

今週を振り返ってみれば、絶妙なタイミングでのCADJPYの買いでしたね。地政学的な不確実性はむしろ資源国であるカナダドルにとっては追い風になっています。

何といってもカナダドルとの相性がピッタリなんでしょうね。

たった一つの指標や発言で潮目が変わることもありますので、無理のない楽しいトレードを心掛けていって下さいね。
DDT
2006年07月14日 21:43
再度の御返答ありがとうございます。
北朝鮮リスクを考える上で面白いレポートを見つけました。
ttp://www.strategypage.com/htmw/htwin/articles/20060714.aspx
North Korean Missile Victories
July 14, 2006

ストラテジー・ページ:北朝鮮ミサイル乱射で、勝者と敗者は?

加えて、安保理では今日から明日にかけて北朝鮮の決議が出るようです。
これは非難決議であっても、国連憲章第七条が削除されていても、実質日米の勝利となります。
もし、北がミサイル再発射の事態になれば、次は制裁決議になり、中露も拒否権は発動出来ません。
北の目標が「生き残り」ですから、日本・韓国本土領海へのミサイル発射は想定できませんので、事実上、手足の縛られた状態に北は陥っていることになります。
次の手が思いつくまでは、北は沈黙するでしようし、事態は沈静化に向かうでしよう。

DDT
2006年07月14日 21:53
イラン問題も制裁を視野に入れた(中露は容認)安保理決議が可決されています。
後はイランの出方次第では経済制裁の可能性もありますが、筋道が付いて来ています。

後はイスラエル・レバノンですが、この中東リスクをネタにして原油市場に仕掛けている輩達が問題です。
早期に原油が落ち着いてくれませんと、米株が下落基調から離脱できませんし、その影響で日本株も上値が重い展開です。

しかし、ある程度の筋道は付いていますので(イスラエル以外は)近いうちに沈静化に向かうものと思っています。

長文が続きすみません、今日はこれで控えたいと思います。
mori
2006年07月14日 22:01
DDTさん、有益な情報ありがとうございます。

北朝鮮制裁決議もG8前の決着となりそうな情勢となっていますね。
地政学的な不確実性の呪縛から解き放たれることを願っています。
EURO SELLER
2006年07月15日 03:40
DDTさん、森さん、

GBP/JPYを213.65Sで仕込みましたので、
可及的速やかに制裁決議が決着し、GBP上昇の一員である原油価格も続落するように願っております。

ふみこ様、こちらは50-60PIPSで利確しますので、長期的なCADの上昇には影響ありません。ご容赦を・・・

今、福井総裁の会見を聞いています。稀代の日銀総裁だと思っています。鬼平や速水とは比べ物になりません。もう一回ぐらい利上げしてから退任していただけるなら、アジアのグリーンスパンとは言わないまでもアジアのトリシェと呼びたいと思います。(^_^;)
mori
2006年07月15日 10:06
EURO SELLERさん、こんにちわ

GBPJPYのショート、私の場合は残念ながらタイミングが合わず、来週に持ち越しとなっています。原油高騰は極めて重要なリスクファクターとなっていますが、切り口を変えて中東オイルマネーの行方を見極めていきたいと考えています。

こうした観点からは、イラン核開発問題やイスラエル情勢の行方も大きくかかわってくるものと思われますので、当面はこの地政学的要因から目が離せないですね。

来週も頑張って参りましょう。
サイレン
2006年07月15日 16:41
こんにちは森先生。

以前IMM関連で質問させていただいたサイレンです。

今回のロシアでのサミットでグローバル・インバランスが取り上げられる可能性はいかがなのでしょうか?

あまりにも政治的な地域紛争の話題が大きくクローズアップされ忘れかけているようですが、問題は以前として解決への進展が見られず、しかもロシアと
いう場所柄何らかのメッセージが発せられても不思議でないと思われるのですが?

日本もゼロ金利解除を実施いたしましたし、タイミングとしてはちょうど良いのではと私見では考えています。

さしつかえなければ、先生のご意見をよろしくお願いいたします。

mori
2006年07月15日 17:03
サイレンさん、お久しぶりです。

 サンクトペテルブルク・サミット(主要国首脳会議)では、北朝鮮およびイラン核問題と原油高が主要議題となっているようです。

 市場の関心も地政学的要因と原油価格高騰に向かっているため、グローバル・インバランスについては国際会議の多い「通貨の秋」に再浮上してくると勝手に決め込んでいます。

 市場のテーマを見誤ると大変なことになりますので、一つのシナリオに固執しないように慎重に分析していきたいと考えいます。
来週もよろしくお願い致します。
m.m
2006年07月15日 20:11
森さんこんばんは。

この一ヶ月は北朝鮮絡みの資金の流れと昨年の米主導とは違う、日銀主導の金利相場にされた感があり、ドルが強含む結果となりましたね。

もうしばらくは不本意ながら上値は限定されつつ(昨年とは状況が違うため)もドル強含みのもみあい相場が続きそうですね。こういうときは無理に下値を追っかけず、短期押し目買いがしばらくは有効なのではと考えております。
(続く)
m.m
2006年07月15日 20:11
そこでこのもみあい相場は一体どちらに抜けるのか、ということになりますが、私は米の明確な利上げ停止サイン待ちがもっとも現実的と考えております。米短期金利6.0%越えなど誰一人として望んでいない状況では、利上げ停止はカウントダウンも既に終わりに近づいていることは誰しも認識されていることであり、そこで実際にFEDから停止容認の空気が出始めてくると、金利差拡大の幻想を抱いた泡沫の金利相場から、置き去りにされた世界的不均衡の是正問題に市場は否応なしに目を向けざるを得なくなると考えています。

とりあえず当面は今の流れに逆らわない短期トレードで様子見しながら、次の動意の手がかりになるサインを見逃さないようマーケットの流れを見守りたいと思います。

長文失礼いたしました。
mori
2006年07月15日 20:45
m.mさん、こんばんわ

私も同様のシナリオを描いています。
そして、ご指摘のように今は流れに逆らわず、短期売買でしのぎながら、ビッグチャンスを持ちたいと考えています。

来週はバーナンキFRB議長の半期議会証言が注目イベントとなっていますが、「景気減速」と「インフレ」の狭間で議長のインフレ警戒姿勢の本気度が試されることになります。

いずれにしても、三極経済圏が同時利上げという局面は、米国経済の減速で幕引きとなっていますので、過去の動きが参考になるかもしれません。

慎重に潮目を見極めていきたいと考えいます。
m.m
2006年07月15日 21:04
お返事いつもありがとうございます。

ここに来てもなお”圧倒的な金利差”云々言いながらドル買いを推奨する一部アナリストの多さを見ると、このテーマも本当に潮時だと感じさせされます。
”拡大し続ける金利差”という幻想が崩れ去った後、市場はなおも縮小をはらんだ金利差にこだわり続けるのか、それとも新たな(置き去りにされた)テーマに沿って動いていくのか、森さんが常におっしゃっている”持続可能なトレンド”を考えると答えは一つに絞られると考えています。

一通り三極それぞれ健全化に向けた方向性を打ち出した後、来週のバーナンキ議長のコメントはこれまで通りインフレ抑制を第一に押し進める内容となるのか、微妙なニュアンスの変化を見落とさないよう気を引き締めていきます。

来週の森レポートも楽しみに待っております。
暑い日が続きますがくれぐれも体調変化にはお気を付けくださいますよう、今後ともよろしくお願いいたします。(そういう私もちと夏バテ気味ですが…w)。
mori
2006年07月15日 21:12
ありがとうございます。

とても励みになります。
現在はとても難しい局面ですが、これも試練と受け止めて、乗り切っていきたいと考えています。
来週もよろしくお願い致します。
m.m
2006年07月15日 21:30
本当に難しい相場ですが、福井総裁の一時のハト派発言よりも、日本がゼロ金利を解除したという”事実”こそが今後の相場展開の道標になっていくという気がしてなりません。

私はいつも森さんのコメントを力に変えて、日々勉強させていただいております。
来週もまたよろしくお願いいたします。

この記事へのトラックバック