ワシントンG7ギャップまでも侵食し始めたドル高・円安!?

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 昨日のUSDJPYは、東京タイム早朝に付けた114.68円をボトムにして、欧州序盤には北朝鮮が米軍偵察機の領空侵犯で軍事衝突の可能性を示唆したことを受けて115円Lowへ上昇、また新興市場国通貨の対ドルでの急落で115円Highへ続伸し、NY中盤には来週のFOMCで50bpの大幅利上げが実施されるとの観測や、福井日銀総裁が「48時間以内に辞任する」との出所不明の噂が出回り、一時116.29円まで上値を拡大した。

 108.97円(05/17)を起点とするドル高は、ついに“グローバル・インバランス”の象徴でもあるワシントンG7ギャップ(=115.95-116.55円)を侵食し始めており、筆者にとっては内心穏やかでない水準に位置するが、ここは冷静にドル上昇を促した要因を整理することにしたい。

・北朝鮮問題を日本の地政学的リスクとして捉える動き
 北朝鮮ミサイル発射実験を巡る一連の騒動は、米軍偵察機の領空侵犯により北朝鮮が事態は「深刻な軍事衝突」につながりかねないと警告しており、北朝鮮情勢の緊迫化が地理的に近い日本の地政学的リスクとして捉えられている。 軍事評論家は米朝対話の必要性を指摘しているが、米国サイドは拒否しており、事態収拾の兆しが見えない状況下では、日本売りの材料として燻り続けることになる。

・新興市場国売りの動き
昨日は、ニュージーランドの1-3月期経常赤字が過去最高となったことを受けて、対ドルでの売りに拍車が掛かり、南アフリカも同経常赤字が24年ぶりの高水準に拡大し、対ドルで急落している。

 こうした対ドルでの下落は、トルコ、ハンガリー、スロバキアなどの新興市場国通貨にも波及し、ドルがほぼ全面高の展開となっている。 高金利通貨売り・ドル買いの背景には米金利先高観が存在しており、至上空前のカネ余り(過剰流動性相場)で膨張したリスクマネー収縮の動きがなお続いていることになる。
 ドルへの資金回帰が足元のドル高を促しているものと推測されるが、主要各国中銀が金融政策の正常化を進展させるなかで、一方的にドルが買われ続けることにも限界が生じよう。

 但し、日銀は今年3月に量的緩和を解除したものの、ゼロ金利政策は実質的には量的緩和策と大差なく、むしろ足元の物価上昇により実質金利のマイナス幅が拡大しているため、金融緩和度合いの高まりが円安を促している側面があるといえよう。
(⇒06/20に発表された5月の金融政策決定会合議事録では、「いつまでもゼロ金利を維持することは不適当である」との見解が示されていた。)

・FEDの大幅利上げ観測
 昨日のNYタイム中盤では、FEDとプライマリーディーラーの間で行われた定例会議(06/21)で来週のFOMCで50bpの利上げの可能性が指摘されたとの憶測が広がり、一段のドル上昇に弾みを付ける格好となった。 市場の短期金利見通しを反映するFFレート先物市場では、来週のFOMCでの25bpの利上げ確率が110%に達し、50bpの利上げ確率が10%存在することを示している。 また、8月のFOMCで5.50%へ引き上げられる確率は90%にまで達している。

 この日発表された米経済指標では、新規失業保険申請者件数が30.8万件と前週の29.7万件から悪化し、5月の景気先行指数(コンファレンスボード)は低下幅が昨年9月の大型ハリケーン襲来直後以来の最大を記録するなど、ファンダメンタルズ面では一段の金利上昇を正当化する材料ではなかった。

 しかし、「FRBには絶対に逆らうな」とのウォール街の教訓通り、米債券市場ではFEDの利上げ観測にキャッチアップする形で7日続落(=金利は上昇)となり、政策金利の動向に敏感な2年債は5.25%と2000年12月以来の高水準に上昇、10年債は5.21%と4年ぶり高水準を付けている。

 マーケットは、すでに8月FOMCの追加利上げまで織り込んでしまっており、市場の関心がインフレから景況感に移る局面では、その反動的な動きが強まる可能性には留意したい。

・福井日銀総裁の辞任問題
 「福井日銀総裁は48時間以内に辞任する」―――。 出所不明の噂ながら、福井総裁は海外勢から信認が厚かっただけに、今回の村上ファンドへの資金拠出問題はダメージが大きく、未だにマーケットを揺さ振っている。 48時間という時間的な制限に従えば、この週末が期限となり、来週明けにはこの噂の有効性が判明することになる。

 しかし、最も重要なことは、市場がこうした噂に反応するほど円に対するセンチメントが弱気に傾斜しているということでもあり、現状では円売り・ドル買い材料に反応しやすい地合いにあることを念頭に置いておきたい。

 これら複合的な要因がどこまでドル上昇を促し、正当化するかは、市場センチメント次第という側面も否めないが、テクニカル面ではワシントンG7(04/21)ギャップの上限である116.55円処が上値攻防の焦点となってこよう。 ちょうど、同水準にはFibonacci retraceの116.65円処(=61.8% of 121.40⇒108.97)も控えており、筆者にとってのドル上昇の許容限度となっている。

(6月23日 11:30記)

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この記事へのコメント

初心者KT
2006年06月23日 12:40
森先生、こんにちは。
G7後の急激な円高は結局はお金儲けの為の材料だったんですか?なぜ、今の段階でこんなにも円が弱くならないといけないのか、自分にはわかりません。
mori
2006年06月23日 12:55
こんにちわ

さきほど、為替ディーラーの方と話していましたが、USDJPYが116.55円処のLarge Stopを誘発して上昇するのであれば、ドル安見通しは断念せざるを得ないということでした。

116.55円処のLarge Stopを達成して終わる場合もあるため、NYクローズの着地点が重要になってきます。

このまま日銀がゼロ金利政策を継続し、米経常赤字に懸念を示した主要各国要人が問題はないと言えば、ドル高・円安は正当化されるかもしれません。
しかし、これは非現実的であり、いずれその反動が倍返しでくると懸念しております。

足元のEURUSDは直近安値1.2530㌦(06/13)を割り込んでいません。
今日のコメントには敢えて掲載しませんでしたが、昨日のFRBインデックスは06/19につけた38%戻しの高値を超えておらず、波動的にはドルのリバウンド局面の位置付けとなっています。
この点は重要だと思われるタイミングを見計らってチャートを掲載したいと考えています。
初心者KT
2006年06月23日 13:08
先生、ありがとうございます。
今の為替相場はオセロゲームみたいで、正直初心者にはつらいです。私も初めドルロングでしたが、先生のオンデマンドセミナーで方針を変えました。なので、ここより先は本当に円高なって正常化プロセスに邁進してほしいです。
本当に先生のコメントありがたく頂戴します。
mori
2006年06月23日 13:44
そんなお礼なんて言わないで下さい。
先程のベテラン為替ディラーさんとの話の中で、TV出演されている外銀の著名ストラテジストの話題になったんです。

 その方は、ワシントンG7直前まで125円超のドル高を唱えていたのですが、G7後には105円円までのドル安に宗旨替えし、2週間ほど前までは115円までのドル高へ修正し、現在は117円までのドル高に上方修正しています。

 その方は結果的にTV出演されるたびに相場観を大きく修正されていますが、マーケットは毎日様々な材料を織り込んで動いていますので、一つの相場観に固執し過ぎるのはよくないというお手本でもあるという話しで、私自身も多いに見習う必要があると感じた次第です。

 因みにその方はモーニング・サテライトと日経CNBCのレギュラーをされています。
う~ぱる~ぱ
2006年06月23日 14:07
相場のことは相場に聞けといいますが、ここ数週間のドル円の堅調な上昇は意外でした。吹き上がって
どすんと下げるなら天井を打つのでしょうが、じわじわ上がる間は、棒下げもないでしょう。おまけに
日銀総裁の聞けば聞くほど脇の甘い事件は私にとっては止めうちの、円高期待に対する失望要因です。
119.70近辺までは可能性としてあるんしょう
かねえ。逆に119円前後は戻り売りの急所に思ってはいるんですが。
DDT
2006年06月23日 14:33
こんにちは、森先生。
昨晩は、憶測、出所不明の噂、為替マーケットならではの風説相場でした。
私は、「グリーンスパン議長事故」とか「速水総裁倒れる」などの風説を思い出してしまいました。
私の浅い相場歴で見れば、こう言った風説が飛び交うような事態は一相場の終わりに良くあると記憶しています。
そろそろ、この戻り相場も終了間際と言う事でしょうか?
北朝鮮絡みの地政学的リスクの払拭が無ければ円安圧力は消えずらいでしようが、ブッシュ政権次第でしょうね。
私は、この地政学的リスクは次の市場テーマと見ていましたので、些か早すぎると見ています。
まずは、金余りの解消をして貰ってから地政学的リスクに移って欲しいところです。
まずは、暴力的なドル安を希望していますが(笑
う~ぱる~ぱ
2006年06月23日 14:57
G7 ギャップとは、結局のところ、IMF使って
広範囲な為替調整(ドル安)を、やや思いつきに近い感覚で意図した米国が、その後発生した株安で
驚いて腰引け発言をし始めたら、バーナンキが失地回復でインフレファイターとして力瘤を入れ始めて
世界中ドル売り、買戻しで振り回されて元に戻ったということでしょうか? 森さんのおっしゃる整合性のあるドル安定策を志向するなら、そりゃ、ドルがスタート地点よりあがっても特段おかしくはないいけどね。また、米国のパッチワーク的為替政策には失望しました。
mori
2006年06月23日 15:09
色々な見方ができますね。
昨年までドル高論者だった私が、今はどうしても強気になれないモヤモヤ感があります。

この答えを探るために、今はこれまで以上に様々な観点から分析しています。
運動不足ですが、精神面からのダイエットになりそうです。
初心者KT
2006年06月23日 21:24
先生こんばんは。
先生や他の皆様のコメント大変参考になりました。
自分の感想ですが、米ドルが28日もしくは29日までに116.60銭をきれいにどちらかに行くかが今後の相場を占う事になります。やはり、米ドルの次はユーロが叩かれるのですか?(なんとなく、万人が知る上で新聞という媒体で材料を尽くしたという感じがしたから)先生は28日、29日までの6月の動向どう感じていらっしゃっていますか_?
mori
2006年06月23日 21:38
こんばんわ

ご存知だと思いますが、来週は月末の週であり、主要各国で重要指標の発表やイベントが目白押しとなっています。
また、テクニカル面では今晩のNYクローズを見ないと現時点でイメージすることは困難です。
(欧州主要3通貨が全面安となっています)

来週の見通しについては、土日でしっかり分析しますので、最新の『森レポート』を参照願います。
初心者KT
2006年06月23日 21:50
先生の森レポート楽しみにしております。
では、また自分もしっかり一歩ずつがんばります。

また 先生がおっしゃっていた、楽しいトレードを初心にいたします。 では またです、たびたびおじゃましてすいませんです。
DDT
2006年06月23日 22:56
あっさり116円割れが来ました。
達成感で反転と言う雰囲気が濃厚になってきましたね。
もちろん、NY終値次第ですが。
やはり、ワシントンギャップは一筋縄ではいかないどころか、天井となり得そうですね。

森レポート楽しみにしています。
mori
2006年06月23日 23:34
来週の「森レポート」は気合いを入れて頑張らなくてはいけませんね。

USDJPYはこのままでいくと、ワシントンG7ギャップは日足の実体部での「窓埋め」とはならないかもしれませんね。(不完全燃焼型の達成感)
足型は上ヒゲの長い陰線となるかどうか微妙なところですが、NYクローズの着地点をみてからジックリ分析したいと思います。

今週は出入りの激しい無駄なトレードを幾つも行ってしまいましたが、来週につながる良い形で終わることができましたので、新たな気持ちで頑張りたいと思います。

1週間お疲れ様でした。

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