相場トレンドすら読みきれない懲りない面々!?

 昨日のドルの対主要通貨相場は、NYタイム中盤までの堅調から一転して急落、対円では最近の高値圏である119.50円から118.67円へ、対ユーロでは1.1686㌦から1.1822㌦へと売られた。

 この日発表された11月のFOMC議事録で、一部の委員から利上げの「行き過ぎ」を懸念する声が上がっていたほか、金利と金融政策に関する声明の文言を「遠くない将来に変更」する必要性も協議され、「Measured利上げ」の転換点は近いとの見方からドル売りが優勢となった。

 これは、史上最強のFEDウォッチャーである「FFレート先物」の最近の見方を裏付ける内容でもあり、米金利先高観の後退が株高・債券高の一因にもなっていたのである。

 重要なことは、これが持続的なドル売りを促す要因であるかどうかであり、筆者が着目する「過剰流動性相場」という位置付けにあるとすれば、潤沢なマネー流入の受け皿としての機能や条件を備える米金融資本市場が売られる可能性は想定しづらく、一時的な調整局面があったとしてもドル高基調が転換する可能性は低いといえよう。


 ところで、昨日は久しぶりに榊原元財務官の為替に関するインタビュー記事が配信されていたが、これが「ミスター円」の発したコメントなのかと愕然としてしまった。
 何はともあれ、以下に掲載したロイターの配信記事を読んで頂きたい。

1ドル=125円突破で円買い/ドル売り介入を実施するだろう=榊原元財務官
[2005/11/22 14:54:29]
[東京 22日 ロイター] 榊原元財務官(現:慶応義塾大学教授)は22日、ドル/円が1㌦=120-123円付近で当局による口先介入、125円を突破すれば、円買い/ドル売り介入が実施されるだろうとの見方を示した。ロイターとのインタビューで述べた。 榊原元財務官は、現在の為替相場は金利相場になっているとし、「金利を上げている米国・カナダの通貨は強い。ECBも金利を上げるだろう。日本はゼロ金利で金利引き上げが一番遅れる、場合によってはできないため、円安になっている」と説明。 そのうえで、「120円を突破し、122円、123円になると、口先介入が入るだろう。125円を越えれば、実弾(介入)があるだろう。このような状況で125円や130円になるのは異常だ」と述べた。これまで1ドル=125円を越えてくると介入が行われてきたほか、「乱高下を防ぐというカテゴリーに入る」とした。 政府・日銀は、2004年3月のドル買い/円売り介入以来、介入を実施しておらず、「介入に踏み切れば効くだろう」と述べた。 為替相場の見通しについては、1㌦=120円は越えるが「125円に行くかどうかは分からない」と述べるにとどめた。 また、榊原氏は、12月2、3日にロンドンで開かれる7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、為替は議論にならないとの見通しを示した。



 筆者は、同氏が国際金融国局長の頃からその発言に注目してきたが、最近のコメントは当時のような市場に対する力強いメッセージや神通力を微塵も感じることができない。

 同氏の今年の為替に関するコメントを振り返ってみると、まったくトレンドを読み切れておらず、後追いになっていることがわかる。誰しも目先的な相場観の狂いは生じても、大勢での相場トレンドを大きく踏み外すことはほとんどなく、それに狂いが生じているということは市場テーマが見えていないことになる。

 今回の同氏によるコメントでショックを受けたのは、実弾介入の可能性に言及しているところである。安易に1㌦=125円を介入水準として提示することは、投機筋に不要な目標を与えかねない。

 そもそも市場介入というのは、相場が無秩序に陥ったときの最終手段として実施されるものであり、介入の方向性と財政政策や金融性政策の方向性が一致しない場合は、一時的な効果でしかないことは歴史が示している。
 市場を熟知した者であれば、介入で相場トレンドが変えられるとは考えないはずである。

 まず、日本の財政政策にあっては、小泉内閣が改革総仕上げと銘打ち安易な増税に走ることなく歳出削減を先行させる形で新規国債発行枠30兆円という当初目標を掲げる緊縮型を目指しているのである。
 そして、日銀も緊急避難的措置としての量的金融緩和こそ解除するもののゼロ金利の維持により、緊縮型財政に伴うデフレ圧力の緩和に努め、名目成長率の上昇に向けて政府と日銀が協力していくという構図ができつつある。

 少子高齢化が加速する状況下での喫緊の課題は、完全なるデフレ脱却と日本経済の潜在成長率の向上であり、米政策当局がドル高を受け入れているこのわずかな期間に通貨政策としての円安の恩恵も最大限活用する必要性にも駆られているのである。
(潜在成長率の向上により、名目成長率の上昇が達成されることになり、同時に自然増収も期待されてくる。これにより二桁の消費税は回避されることになる。)

 また、現在は同氏が現役で「勝つ介入」を豪語していた頃とは全く世界が違うということを再認識する必要があろう。柔軟な為替変動の必要性で合意した『ドバイG7』(2003/09)以降は、市場主義に回帰するため主要各国当局は努力し続け、「実弾介入」はすでに死後になりつつあったはずである。

 にもかかわらず、ここで安易な「介入論」を展開すれば、渡辺財務官らの努力が報われないばかりか、中国の人民元改革にも水を差しかねない。
内海元財務官のコメントと比べて重みが違うと考えるのは筆者だけであろうか?



以下は榊原元財務官による今年3月からの為替に関するコメント:
・3月4日:(ロイター)
「短期間に1㌦=100円を突破する可能性があるが、90円まで円高が進むとは予想していない」
・6月28日:(ブルームバーグ) 
「1㌦=110円を円安方向に抜けて、111 円から112円までドル高・円安が進んだとしても、その後は逆に戻ってくる可能性の方が高い」
・9月21日:(ブルームバーグ)
年末までのドル・円相場について、「内外投資家の資金の流出入が均衡していることから、需給面では変動要因に乏しく、1㌦=108円から112円のレンジ内での動きにとどまる」


(11月23日 10:10)

史上最強のFEDウォッチャー「FFレート先物」のグラフを用意していますが、画像を添付することができないため、申し訳ありませんが画像なしで見てください。

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この記事へのコメント

フェレンギ
2005年11月23日 11:50
今日は、昨日はコメントのアップが遅かった為に、もしや、健康を崩したのでは?と心配していましたが、サーバーの問題と解り安心しました。
師走も迫り、くれぐれも御体に気をつけてください。
松明が一瞬でも消えてしまうと、迷える子羊や
黒き盲目の羊が道に迷ってしまいます(笑

しかし、ちゃんと材料が出るものですね。
普段は全く影響視されないイタリア政府からの
ユーロ利上げ容認のアナウンス。
以前、ユーロ崩壊に繋がるアナウンスが出たときは材料視されませんでした。
FOMCの予想外な議事録(森さんは想定内でしたでしょうが)
ファンド筋の利食いの材料は揃ったと言ったところでしょうか?
今晩は、一旦は117円Lowくらいは覗くのでは?と期待して下での買い準備とスケベ心のショートを組んでみました(笑
さて、今晩が楽しみです。
でも、これから娘のピアノ発表会で7時くらいまで帰ってこれないのが残念ですが。
mori
2005年11月23日 11:58
 フェレンギさん、ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。

 ところで、手仕舞いを促す材料は日柄面だけでなく事欠かないにもかかわらず、ドルは堅調を維持しています。

 過剰流動性相場の真只中にあるということを前提にすれば、簡単にはドルは崩れないかもしれませんね。
フェレンギ
2005年11月23日 21:18
本当に堅いですね、ドル円。
今、帰ってきましたが、118円丁度にも届いていないと言う買い勢力の強さには呆れてしまいますね。
マイルールに乗っ取り昨晩と今朝116円台までのホジを利益確定したのですが、早まったかとも思い始めています(笑
取り敢えずは119.50p近辺からの短期下落トレンドは効いているようですから、買い増し場面を期待しています。

私見ですが、内海、渡辺、黒田元財務官の方々と比べた場合、分析力・洞察力そして、品位が榊原氏が劣ると言うのは同意です。
しかし、彼の鉄火場の住人のような下品さとネガティブインジケーターは私は重宝しています(笑
mori
2005年11月23日 22:00
 USDJPYはNYクローズで119.64円処(昨日までのデータを基に算出した暫定値)を割り込んだ場合、要注意となります。
 また、『上昇チャネル』の下限は明日24日時点で118.66円処に位置することになりますので、微妙な値位置となりますね。

EURO SELLER
2005年11月23日 22:19
こんにちは、森さん、

昨日、利確はしたもののEUR/USDでもやはり、EURの上値は限定的のように思います。忍び寄るHIAの影がしっかりした戻り売りを生んでいるのでしょうか。トレンドクライマックスはまだ先と見ます。

私も私見を述べさせていただくと、バーバラ元財務官は現役時代はその地位を利用して介入できたのでしょうが、その当時と多国籍間の貿易額もヘッジファンドの規模も大きく異なっています。為替はそれ単独で制御できる存在でなくなったという事実を認識していれば、もっと勉強するはずです。彼の為替時計はきっと止まっているのでしょう。曲がり屋指標として活用するしかありませんね。
2005年11月23日 22:24
森先生、大変でしたね、私達のためにそこまで
機を使っていただいて本当に感謝しています。
自分自身の投資指針がなければここまでの勝負
波はできません。
11月30歩ボトムを信じて待ちます!。
mori
2005年11月23日 22:48
 EURO SELLERさん、さすらいさん、こんばんわ

 すみません、私は85年のベーカー財務長官時代からの記憶しかなく、バーバラ元財務長官はわかりません。でも、仰るように為替時計は止まっているんでしょうね。

今日のコメントには書かなかったんですが、USDJPYが101.67円(01/17)に下落していた局面で本邦当局が仮に実弾介入していたら、きっと1㌦=100円を割り込んでいたでしょうね。

 当局が介入に踏み切らなかったからこそ、介入期待の安易なドル買いポジションが積み上がることなく、自律反発的に切り返すことができたと分析しています。

 渡辺財務官はあまりマスコミの前には登場しませんが、影の実力者として一目置かれている人物だそうですよ。

さすらいさん、お気遣いありがとうございます。
相場分析がライフワークになっていますので、パソコンと私が健在である限り続けたいと考えています。
EURO SELLER
2005年11月24日 00:14
えへっ。バーバラ=榊原の意味で使いました。(^_^.)そういう米財務長官がいたのですか。勉強になりました。
mori
2005年11月24日 00:22
 そうですよね、記憶にないはずですよね。
でも思わず笑ってしまいました。
思考回路の柔軟性が必要だったわけですね。
勉強になりました。

では、今晩のNYクローズの着地点を楽しみに休ませて頂きます。

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