市場関係者の大勢が年明け円高への反転を予想!?―――日経金融新聞一面トップ

 USDJPYは昨日のNYタイム序盤に一時119.43円と2003/08/14(=119.70円)以来のドル高・円安水準を示現した。このあと118.71円へ反落する場面がみられたが、引き続き高値圏にとどまっており、基調転換を警戒させるには至っていない。
 108.75円(09/05)を起点とするドル高・円安局面はすでに11週目に入っており、大方の上値目処とされる120円処も射程圏に捉える水準にまで迫っている。

 今朝の日経金融新聞一面トップは、「円安、年明け反転 大勢」との大見出しを掲げ、一時119円台に突入したUSDJPYについて市場関係者6名の予想レンジとコメントが掲載されている。

 円安が年明けに反転すると見る市場関係者の最大の根拠となっているのは、「日米金利差拡大」に歯止めが掛かるというものであり、市場の焦点が再び「米国の双子の赤字」に移るというものである。
 また、来年は米国雇用創出法( 内国投資促進条項)に絡む米企業のドル買い需要がなくなり、年度末に向けて円買い需要が強まるとともに円高方向に振れやすくなるというものである。

 筆者はこうした見方に基本的には異論はないものの、最も予想の多かった「来春までにFRBがFFレートを4.50-5.00%に引き上げた段階で利上げを止める」というのが相場反転の根拠となっているところに少々がっかりしている。

 まず、なぜFFレートが4.50-5.00%で打ち止めになるのか、その根拠を尋ねてみたい。
 筆者は昨年6月のFOMCを起点とする一連の利上げサイクルの最大の目的が、従来の景気循環対応型の利上げだとは理解していない。
(⇒筆者はFRBの利上げは昨年3月のグリーンスパンFRB議長による日本の巨額為替介入を止めさせるところから始まっていると考えている。巨額のドル買い介入で得た資金で米国債を買われたら、米長期金利がFRBの思惑に反して低下してしまい、住宅ブームなど局地バブルを助長する要因になるからである。)

 FRBは、昨年11月の米大統領選挙の真只中や、今年5月のソフトパッチ(景気の軟調局面)が指摘される最中でも「Measured利上げ」を休止することはなかった。
 すでに「Measured利上げ」は12回連続で実施され、累積利上げ幅は3.00%に達しているが、FOMC声明は依然として緩和的な政策を「慎重なペース(=measured)」で解除できるとの文言を据え置き、むしろ市場との対話を通じて利上げ継続を織り込ませている。

 こうした観点からは、膨大な「双子の赤字」問題を抱える米国の金融政策の真の目的が何であるのかを再検証する必要があろう。

 それでも、市場関係者の多くが指摘するように累積利上げの重圧で米景気減速懸念が強まれば、利上げ休止の選択肢が浮上する可能性も考えられるが、この場合には幾つかのシナリオを想定する必要が出てこよう。 

 FRBが利上げ休止のサインを送れば、為替市場では条件反射的なドル売りが想定されようが、米株式・債券市場はむしろ利上げ休止を好感する買いで上昇し、ドル安も持続的でなくなってくる。
 債券投資にとっては、米利上げ打ち止めが最強の「買いシグナル」になることを念頭に置いておきたい。

 また、FRBが利上げを打ち止めした場合でも、利下げに転じない限り4.50-5.00%の短期金利は持続的であり、14日のグリーンスパンFRB議長の講演のコメントにあるように海外投資家が赤字補填に尻込みするまで米国への資金流入は続くことになろう。
基軸通貨ドルの短期金利が4.50-5.00%となれば、短期流動資金はドルに傾斜することになろう。

 もう一つ別な観点から付け加えておくとすれば、仮にFRBが米景気減速懸念で利上げ休止を余儀なくされる状況下では、日本経済への相応の悪影響も免れず、日銀も政府・与党を説得して量的緩和解除(⇒この段階ではゼロ金利が続くため円高反応は持続的ではない)に踏み切ることは困難となってこよう。

 ましてや、日本経済の喫緊の課題はデフレからの完全なる脱却であり、脱デフレ後の優先課題は財政再建となってくる。
 量的金融緩和は、金融システム不安に対応した緊急避難措置であり、金融仲介機能の正常化と共にその役割を終え解除されるのは当然の帰結といよう。

 しかし、小泉首相が改革総仕上げと位置付ける「緊縮型財政」(⇒来年度国債発行額30兆円)に対して、日銀による金融政策面からのサポートは「ゼロ金利政策」の継続となってくる。
 つまり、日本のポリシー・ミックスの組合せは「緊縮型の財政政策」+「ゼロ金利による金融緩和政策」であり、結果としての通貨政策は持続的な円安バイアスが掛かりやすくなっていることを留意しておきたい。

 これから年末にかけて「来年の為替見通し」を題材とするセミナーや雑誌が増えてくると思われるが、これらに接する際には講師の方々が何を根拠にその予想を組み立てているのかを厳しい目で見極め、実際のトレードに役立てて頂きたい。

(11月16日 11:00記)

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この記事へのコメント

謎の勝負師
2005年11月16日 12:48
森さんはまだまだ強気ですか
私もこの相場は意外と
続く可能性を頭に入れています。
まあ、ファンダを考えれば
ドルなんか買えねえ
と言う彼らの気持ちも分かりますけど・・・
現時点では私も金利は下よりも
上のリスクを気にしてます。
アメリカの景気は強すぎ
mori
2005年11月16日 13:12
 謎の勝負師さん、お久しぶりです。
 先月のWEBセミナーではコメントを入れて下さっていましたね。覚えていますよ。

 私は、強気ではなくドル安・円高修正というスタンスです。
 但し、マネーフローの観点から相場の持続性を考えるとドル安・円高は短命だと考えています。
 米国のポリシー・ミックスは、昨年までと異なってドル高が重要となっていますので、中間選挙の年であってもドル高のメリットを享受できるような国策を講じてくるのではないかと考えています。

 過去のドル高・円安トレンドの平均的な期間は24.8ヶ月、平均上昇率は42.3%です。
 あまりにも早くから高値警戒感を煽るアナリストが多っかたため、個人投資家の多くが機会利益を享受できなかったと聞いています。

 USDJPYが120円台を突破した場合、目先的な達成感から反落するリスクが指摘されていますが、むしろKOオプションやStop Lossなどでドル買いが加速する可能性が高いと思われます。
 成績低迷のファンド筋にとっては、ビッグチャンスということになります。
謎の勝負師
2005年11月16日 15:03
失礼しました。
セミナーには参加させて頂いてますので
森さんのスタンスは理解してます。

アメリカのドル高容認(誘導?)は
さすがですが、これもどこまででしょうか?
まずは、バーナンキさんのお手並み拝見というところでしょうか
インフレ率が収まったら
また、ドル安誘導すると思いますけどね
個人的にはドルが下がっていくのは
自然だと思っております。(笑)
豊かな国から途上国へ
富が流れてるだけですからね
逆じゃ困っちゃいますけど
mori
2005年11月16日 16:13
 コメントありがとうございます。  

 私はただトレンドに忠実なだけですよ。
 謎の相場師さんは、10/24のセミナーの時に「それでもドルは買えない」というコメントを書き込まれていましたが、あの時の115円Lowからすでに4円のドル高・円安が進展しています。

 結果論ではありますが、プロの世界ではこうした状況下でアクションが起せないと「失敗」とみなされます。 私は為替売買の収益で生計を立てていますので、先行きのドル安・円高よりも今現在のドル高・円安で収益を挙げることが重要だと考えアクションを継続しています。
60.237.9.187
謎の勝負師
2005年11月16日 17:07
コメントありがとうございます。
何度もスイマセンが書かせてください。

私の様なファンダメンタル投資は
自分の考えに固執しますので
システム売買やチャート分析のように
ある地点にきたら損切るような
ことはしません。
つまり、間違ったポジションを立てると
かなりの痛手を負います。
よって入るときに
相当の慎重さを必要とされます。
よってどんなにトレンドが出ても
自分がその意味を理解してなければ
相場には入りません。
私にとってこれは失敗ではないのです。

余計な事ながら書かさせていただきました。
ちなみに、ドル円で出遅れたので
ユーロドルでドル買い持ってます。

mori
2005年11月16日 17:29
 謎の相場師さん、コメントありがとうございます。

 プロの世界の話を持ち出してスミマセンでした。
 というのは、このブログには分析能力をより高めようとする熱心な個人投資家の方々にアクセスして頂いているからなんです。

 それに、現役の為替ディラーさんだけでなく、物凄い方々もアクセスして頂いているんですよ。
口に出して言えませんが・・・。

でもトレードの基本は「楽しく」ですから、今年1年が良い成績で終われますように頑張って参りましょう。
2005年11月16日 18:16
森先生今晩は
政府発言も織り込んで、22日の天井の可能性もありかとおもわれますが、円全面安というのが、気に入らない展開ですね、やはり世界的に
テーマは金利ということなのでしょうね。
しかし上がり続ける相場はないとおもわれますが
円高に振れるサプライズはちょっと見つかりませんね。
福井総裁よガンバレ!といいたいです^^
mori
2005年11月16日 18:28
 さすらいさん、こんばんわ

 日柄面(対等日数)では11/12のコメントに書きましたように、来週明け11/21-22が転換点となる可能性があります。
 また、108.75円(09/05)を起点とする上昇波動は、11/21がFibonacci numberの55日目となります。

 来週は、日本で11/23が「勤労感謝の日」、米国で11/24が「感謝祭」ということで、日米連休入りというタイミングでもあります。

 トップページのウェブシールの「魅力的なリップ??」のコメントのように、週末までには利益を確定するつもりです。

 そして、来週はノーポジティブでゆっくりと次なる戦略を練りたいと考えています。

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