連立方程式: 「Measured利上げ」+「ECB利上げ」+「量的緩和解除」= ドル安・円高の修正

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 FRBは昨年6月のFOMCを起点とする12回目の「Measured利上げ」を実施し、FFレートの誘導目標は年率4.00%に引き上げられた。

<FOMC声明文のポイント>
★景気・雇用認識: エネルギー高・ハリケーンが一時的に押し下げも、金融緩和や復興活動で拡大へ
★物価認識(前回から変更なし): 長期的なインフレ見通しは抑制
★政策運営方針(前回から変更なし): 緩和政策は慎重なペースで解除

 今回の声明文から読み取れるメッセージは、FRBが引き続き米経済に対する明るい見通しを持っていること、コアインフレは十分に抑制されていること、12回の利上げでも依然として緩和的であると認識していることであり、「Measured利上げ」を継続(⇒休止する理由はない)するということであろう。

 筆者が特に注目していた点は、「インフレ」に関する記述であったが、前回と同じ文言が踏襲されたということは、FRBがインフレ期待を上手く抑制できていることを示すものであったといえよう。

 これは、FRBがインフレ対策で「後手に回る“Behind the curve”」ことなく、「Measured利上げ」を推進することができるということであり、ドルにとっても安心材料となってくる。
 ドルにとってのリスクは、「利上げ打ち止め」ではなく、むしろFRBが「大幅利上げ」に追い込まれることであったが、FRBが最も重視するインフレ指標の「コアPCE価格指数」の安定により“大幅利上げ”に追い込まれることもなく「Measured利上げ」が継続できるというベストシナリオといえそうだ。

<ちょっと解説> FRBの「利上げ打ち止め」は、一時的なドル安要因となっても、それは持続的ではなく、むしろ米株式・債券の買い材料となり得るためドルも必然的に買われることなる。
 しかし、FRBが「大幅利上げ」に追い込まれる局面は、インフレ対応で後手に回ることを意味し、米市場はトリプル安に見舞われることになる。
(インフレが制御できない国の通貨は買いではなく、売りなのである。)

 FRBの利上げの歴史は、金融危機の歴史と密接な関係にあり、世界の金融危機は必ずといっていいほど米金融引き締め局面で発生している。
 FRBが「Measured(慎重なペースによる)利上げ」のスタンスを崩さない限りこうしたリスクも軽減されることになり、米政策当局にとって「インフレ抑止としてのドル高(安定)」が重要になっているといえそうだ。

 史上最強のFEDウォッチャー「FFレート先物」は、今回のFOMC声明を受けて来年3月以降の金利先高観を一段と強めており、バーナンキ新体制下の「Measured利上げ」継続のシナリオも織り込み始めているようだ。

 いずれにしても、今回のFOMC声明で現行4.00%のFFレートが依然として緩和的であるとの認識が示されており、「Measured利上げ」の最終目的でもあるイールドカーブ(利回り曲線)の正常化や米住宅市場など資産価格のソフトランディング、そしてドルの過剰流動性吸収に向けてドル金利は引き上げられることを念頭に置いておきたい。

 こうした市場環境の劇的な変化が、2002年1月をピークに約3年間続いたドル下落相場の修正的な揺り戻し局面を演じているとの解釈になってくる。
 さらに、日銀による「量的緩和解除」から「ゼロ金利政策」解除に至るまでの時間軸効果も加わり、円独歩安の土壌を形成しつつあることも念頭に置いておきたい。

 筆者がネガティブ・インディケーターとするアナリスト(⇒自称:国際金融専門???)が、昨日のモーニング・サテライトNYスタジオに出演していたが、ここにきて「購買力平価説」を掲げて116-117円超のドル高・円安は持続的ではないと語っていたことは実に興味深い。

 昨年までのドル全面安の状況下でドル高・円安を唱えていた同氏が、ここにきて一段のドル高・円安に対して「微妙」と表現し、日米インフレ率の逆転(⇒日本の財政破たん)が起こらない限り116-117円超のドル高・円安はオーバーシュートであり、持続的ではないとしたことから、筆者は敢えて115円超のドル高・円安(⇒正確にはドル安・円高の修正)の定着をメインシナリオとして掲げることにしたい。

 その最大の論拠として、先般提示した連立方程式に「ECB利上げ」を加えて、過去3年に亘って進展したドル安・円高に対する緩やかな修正局面としておきたい。

 「Measured利上げ」+「ECB利上げ」+「量的緩和解除」=「ドル安・円高」の修正

(筆者の考え方は「ドル高・円安」ではなく、あくまで過去3年に亘る「ドル安・円高」の修正という位置付けである)

(11月2日 10:45記)

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この記事へのコメント

フェレンギ
2005年11月02日 17:04
今日は。
森シナリオ、成就目前ですね、おめでとうございます。
117円台へブレイクした場合、森さんのシナリオは完成と私的には見ています。
問題は、森さんのシナリオに世界が追従し始めた時ですね。
115円では高すぎて買えないとのたまっていた大手機関、ドルの下落、調整を待っていた勢力、雪崩を打って買い上げてくると見ています。
そういった、流れが出来れば短期筋、手仕舞い間際の思惑筋、今年良い成績を出していないファンドなどの追従買いがその流れを煽ることになると見ています。
やはり、大きな相場の変換期にはオーバーシュートは付き物と思いますし(笑
ましてや、大統領選挙の次の年、大相場のフィナーレに相応しいオーバーシュートになると期待しています(笑


フェレンギ
2005年11月02日 17:04
森さんのシナリオは私の予想していたシナリオと同方向に向いていました。
森さんの緻密且つ正確な分析で補強され、私は
なんのブレもなく、自己のシナリオを信じて利益を出すことが出来ました。
この様な幸運を享受出来たのは森さんがいたればこそです。
少し、早いですが、御礼とお祝いを申し上げさせて頂きます。
ありがとうございました、そしておめでとうございます。
そして、これからも、私達無知蒙昧な個人投資家がチャートの闇夜で迷っている時、松明の様な明かりにも似た分析を続けていただけることを心よりお願い申し上げます。
mori
2005年11月02日 17:24
 大変勿体ないお言葉を賜り恐縮してしまいます。フェレンギさんが利益を享受できたということはとても嬉しいです。

 4日(金)14:10~Bloomberg TVに出演するので、前回出演時と資料がダブらないようにと5月と7月に出演した時のレポートを読み返していたのですが、5月頃からドル高・円安のシナリオだったんですね。
 9月初めに108.75円まで下がった時にはやや弱気方向にブレましたが、何とか軌道修正することができてよかったです。
 問題はこれからですが、今年1年間、最後まで良い形で終われるように気を抜かないで頑張っていきたいと考えていますので、これからも応援よろしくお願い致します。
 
力丸
2005年11月02日 19:18
森先生、はじめまして。為替暦10ヶ月のヒヨっこです。私も昨日のモーサテ見ましたが、氏がセミナーで話していた内容と全く同じでした。氏の単純明快な見解に一時期かなり惹かれていましたが、自ら為替取引をしたことがないとの発言を聞いてから、氏の見解はうのみにできないなと思い始めました。でも、やはり影響を受けてしまって、ここまでドルが強いのに買えていません。今からでも間に合うでしょうか?当然投資は自己責任であるというのはわかっていますが、氏の購買力平価限界説が頭から離れません。もっと早く森先生のブログに出会えればよかったなと後悔しています。
mori
2005年11月02日 20:12
 力丸さん、はじめまして。
 私は、あの方がここにきて購買力平価説(卸売物価基準)を持ち出したことに少々ガッカリしただけす。しかも“オーバーシュート”というエクスキューズを付きだったことに。
 PPPは前提となる物価指標や基準年の取り方によって異なってきます。OECDの消費者物価基準では133円、経済産業省の工業製品基準では134円となり、実勢レートとはかけ離れています。
 
mori
2005年11月02日 20:14
 大学の講義でもあるまいし、・・・というのが率直な考えで、実践トレードでもっと重視すべきは相場の流れ(トレンド)だと考えています。
 ドル高・円安進展と共に反落リスクが高まるのは当然のことですが、大手生保など現在の相場に付いていけてない参加者があまりに多いため、それだけ持続力があると考えています。
 但し、11月はヘッジファンドの決算月といわれていますので、「収穫の秋」をテーマにたっぷり実った利益を刈り取るタイミングも近づいていると考えるべきかもしれませんね。
 ちょうど、11月4週は米感謝祭(24日)と勤労感謝の日(23日)が並んでいますので、その前には少しずつ手仕舞いを進展させる可能性が高いと思われます。
 ただ、ファンダメンタルズに大きな変化がなければ、感謝祭後に再び現在のトレンドが再開されると観測しています。
 マーケットにはいくらでもチャンスはありますので、焦らずに頑張ってください。
力丸
2005年11月02日 22:02
森先生から直接こんなにコメントいただけるなんて、光栄です!!基準を変えれば値が大きく変動する購買力平価説なんて机上の空論っていうことですね。安心してちょっとドルを買ってみようと思います。

ヘッジファンドの手仕舞いによってトレンドが中断するとのことですが、たしかにシカゴIMMの円ショートが手仕舞いされると強烈な円高になるのは避けられないと思います。ただ、世界各地の株式市場や商品市場等から資金を引き上げ手仕舞いしたときは売却した際に得た現地通貨をドルに替えて米国に送金して決算を迎えると仮定しますと、ドルが下がるのは限定的であるような気もするのですが。

森先生のブログをさかのぼって読めば読むほど先生の相場に対する先見性の鋭さに感動を覚えます。今のドル円強気相場も先生は9月半ばの111円台の頃に既に追撃買いを推奨してらっしゃって、その頃このブログに出会ってたら今の僕はウハウハ状態だったかもしれません。トレイダーズ証券に口座開設すれば全文が早く読めるとのことなので、早速手続きします。
mori
2005年11月02日 22:36
 私の分析が全て正しいというわけではありませんのでその点は十分にご注意下さい。
 ただ、市場のテーマを見誤らないように自ら各マーケットの動きを細かくチェックしていますし、市場に精通する現場の人たちとの情報ネットワークがありますので、アナリストやエコノミストよりも精度は高いと自負しています。
 自分で毎日トレードしていますから、中途半端な分析はできませんからね。
 トレードのチャンスは毎日いくらでもありますが、それをチャンスとして捉えることができるかどうかの違いは、積極的にリスクが取れるかどうかということだどと思います。
 積極的にリスクをとった人がマーケットから報酬を得るということになりますが、プロでも勝ち続けることは不可能ですので、致命的なマイナスを出さないようにリスクシナリオは常に持っておく必要があります。
トレードの評価は損切りの上手さで決まりますので、マーケットに参入した際には予め決めておいた出口戦略を無視しないようにしたいですね。
ご成功をお祈り申し上げます。

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