「値頃感のジレンマ」と「大台替わりの成行買い」

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  USDJPYは、先週10/13の一時的な115円台乗せのあと、今週明け10/17には一時113.75円へと反落したが、10/18には2回目となる115円台突破により、一時115.94円まで続伸幅を拡大した。

 テクニカル分析の前提の一つに「歴史は繰り返す」という教えがあるが、今回の115円台を巡る一連の挙動は2003年9月ドバイG7前後(⇒2回目の115円台割れが決定打となった)と酷似していることに驚かされる。 

 当時の教訓は、数年に亘る頑強なサポートライン(又はレジスタンス)がブレイクされると、各種取引(オプションやヘッジなど)において水準に関係なく相場が抜けた方向の売買が拡大するというものであった。 

 一方、大勢投資家は、数年来の大台替わりに伴う値頃的な警戒感から追随的な売買には踏み切れず、むしろ短期筋は逆バリ的な売買に走ってしまう。
 しかし、大台替わりが定着し始めると大勢投資家の相場観も水準に慣れ始め、次の段階ではトレンドフォロー的な売買の活発化と逆バリ派の損切りが持続的な相場(トレンド)の原動力となっていくのである。

 これは筆者の経験則に基づく行動ファイナンス論の一つであり、「値頃感のジレンマ」と「大台替わりの成行買い」と自ら命名し、昨日は週明けのストラテジー「調整度合いの見極めによる様子見」に対する反省の念を込めてUSDJPYを成行(⇒115.36円)で買っている。

 無謀に見える「大台替わりの成行買い」も、上述の市場心理学に依拠するものではなく、過去数ヶ月に亘って幾度も取り上げてきたFRBの累積利上げ効果とドル過剰流動性の収縮というパラダイムシフト(環境の変化)が大勢相場観の礎となっている。
 現状では、“流動性の罠”から抜け出したジャパン・マネーが、皮肉にも量的緩和解除を織り込む局面で「株高」「土地・不動産の底入れ」「銀行貸出のプラス化」「外債投資活発化」という“ポートフォリオ・リバランス”効果が表面化しているのである。

 さて、講釈はここまでにして本日の本題として、米財務省が昨日発表した8月のTIC(対米証券投資状況)を取り上げてみたい。 

 8月の海外投資家による対米証券投資は、913.40億㌦の買い越しとなり、事前予想の約650億㌦を大幅に上回り、2004年4月に記録した921.04億㌦以来の高水準となった。
 また、8月の貿易赤字580.40億㌦を333億㌦も上回る潤沢な資金流入が確認された。

 ここまでは、各種情報ベンダーやアナリスト等も伝えていることであるが、今回の統計で筆者が注目したのは米国人による対外証券投資が売り越しに転じていることであり、対外資産処分(利益確定)に伴う「リパトリ・ドル高」の兆候が出始めていることである。

 同統計は8月分であるため、カトリーナに伴う対外証券の処分に伴うリパトリは9月以降の統計で表面化することになろう。
 また、日本の金融当局者による量的緩和解除に向けた地ならし発言を受けて、昨日の新発10年物国債利回りは一時1.585%と今年最高を付けたが、債券価格は続落しており、海外勢による円債売りも円安要因として注目されそうだ。

 財務省が毎週木曜日に発表する対内・対外証券売買契約状況(週次)によれば、海外勢は今年4月第1週から6月第2週までに計5兆4,021億円の公社債を買い越している。
 しかし、6月第3週から最新データとなる10月第1週までは2兆9,759億円の売り越しとなっている。

 外国人投資家は、これまで円高を利用して円債の購入を増やす傾向にあったことからすれば、円債売りはなお継続する可能性は高く、“Homeland Investment Act”(米内国投資促進法)とともに「リパトリ・ドル高」の流れが一段と強まるものと観測される。

 尚、資料として米国での甚大な被害が発生した局面におけるFRBインデックス(ドルの実効為替レート)の推移を示したグラフと、IMM日本円市場の総取組高のグラフを添付しているため、参考にされたい。

(10月19日 10:35記)

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この記事へのコメント

すもも
2005年10月19日 15:50
森さん、お久しぶりです。
毎日参考にさせていただいていますが、115円台では怖くて買えませんでした。でも、ご指摘の通りの相場展開となっていることに驚いています。流石ですね。相場が見えているとはこのようなことを言うんですね。これからも先見性のある分析を楽しみにしています。
mori
2005年10月19日 17:25
 お久しぶりです。
 このところ缶詰状態でセミナー資料の作成に取り組んでいたものですから、気分転換で近くの公園まで散歩に出かけており、お返事が遅くなってしまいました。
 いえいえ、私は決して相場が見えているわけではなく、値頃感にだけは惑わされないようにしているだけだと思います。
 また、シカゴの友人の口癖の“Trend is your friend”を忘れないにしています。
 それから、分析する時にはファンドマネジャーの視点からマーケットを眺めるようにしています。
 現状では、昨年後半とは大きく異なって対ドルで円買いを仕掛ける決定的な要因が薄れているように受け止めていますが、常にリスクシナリオは念頭に置いています。
 このリスクシナリオは、11月第2週からThanksgiving Day(11月の第4木曜日)までの時間帯で発生する可能性があるのかなと考えています。
 WEBセミナーではスライド資料を使って解説するつもりですので、よろしかったら見てください。

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