FRB当局にとっての大誤算がインフレ抑止策としてのドル高基調を促す!? 

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  米労働省が先週末10/07に発表した9月の雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が前月比▲3.5万人と2003年5月以来のマイナスとなったが、事前予想平均の▲15万人ほど悪化していないことが示された。
 また、7-8月分のNFPが計7.7万人上方修正された結果、年初からの雇用の伸びは月平均+17.7万人となり、雇用拡大の目安となる15万人はなお維持している。

 米労働省は、カトリーナによる打撃がなければNFPは+19.4万人と同等の水準だった公算が大きいとの見解を示したが、ハリケーン前の米国経済が拡大基調にあったことを再認識させている。

 こうした状況下、米金融当局者からは一斉にインフレ警戒発言が伝えられ、FFレート先物市場では年内2回の利上げで4.25%に達する可能性を80%織り込むなど、市場での金利先高観は再び強まっている。 

 これは、昨年6月を起点とする累積利上げが325bpに達することを意味し、米金利上昇というパラダイムシフト(環境の変化)がドル資金調達から運用に至る全ての取引においてドル需要を高めることになる。

 米企業にとっては、米金利上昇に伴う調達コストの悪化が、“Homeland Investment Act”(米内国投資促進法)と相俟って海外利益の本国回帰に拍車を掛けることになろう。

 ただ、米政策当局にとっては“予期せぬ大誤算”が生じてしまっているのである。 FRBにとって最大の政策目標は、ITバブル崩壊(2000年)後の米国経済を支えてきた住宅市場のソフトランディングであり、昨年6月から慎重なペースによる金利正常化が促されてきた。
(⇒正確には、昨年3月のグリーンスパンFRB議長による日本の膨大な“ドル買い介入阻止” から米長期金利の正常化が図られているのである。)

 しかし、エネルギー価格高騰という状況下での「カトリーナ」襲来が、米政府による被災地復興に向けた積極財政と相俟って“インフレ高進リスク”を一気に高めてしまっているのである。

 これは、FRBの“慎重なペース”の金利正常化という従来の政策スタンスを脅かす最大の脅威であり、ここにきて米金融当局者からインフレ警戒発言が一段と強化されているのはこのためである。

 先週発表された9月のISM製造業・非製造業景気指数では、ともに価格指数の急上昇が示されたが、インフレ率の上昇は中立的とされる金利水準をさらに押し上げる可能性があり、米金融資本市場にとって波乱の火種となりかねない。 

 事実、先週の米主要3株価指数は、こうした米当局のリスクを察知してか軒並み大幅安となり、7-8月の株価上昇分を全て吐き出す格好となっている。

 FRBがインフレ対応で利上げペースの拡大に追い込まれる事態ともなれば、米金融資本市場や住宅市場、そして膨大な債務を抱える家計を直撃しかねない。 

 今週10/14には米9月CPI(消費者物価指数)が発表されるが、FRBが急進的な利上げを回避する観点からは“インフレ抑止のドル高”が「ポリシー・ミックス」のなかで重要な役割を果たすことになり、現在のドル高基調を一段と促すものと観測されよう。

(10月9日 22:10記)

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この記事へのコメント

mori
2005年10月10日 11:03
 8日の日経新聞だったと記憶していますが、中国の外貨準備が世界最大になったことに関するコメントで、大量に保有する米国債をまるで人質のような取り扱いがされていました。

 米国サイドとしては、膨大な双子の赤字をファイナンスするため潤沢な資金流入が必要ですが、ドル買い介入による不安定な資金に頼るのではなく、民間資本による健全で安定的な資金流入を望んでいると考えられます。

 このため、イールドカーブの正常化を促し、来年からスタートする30年債国債への長期安定資金の確保や、2007年から始まる30年国債満期償還のスムーズな借り換えなども念頭に置いているものと観測されます。

 中国などのドル買い介入資金に頼り続けるということは、常にドルが不安定であることの裏返しに他ならず、民間の長期安定的な資金流入は望めないことになると思われます。

 また、FRBは金融政策運営を歪める介入資金による米国債購入を決して望んでいないと思われます。
 グリーンスパン議長が、中国人民元の制度改革を促す発言をしているのもこうした事情があるのではないかと考えています。
mori
2005年10月10日 11:05
 上記コメントは、日経新聞記事を読んで少々違和感を感じていましたので、この場をお借りして持論の一部を紹介させて頂きました。
ご容赦下さいますようお願い申し上げます。

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